OB・OG会

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多摩高野球部創部60年、大先輩への聞き語り

高校野球部創部60年、大先輩への聞き語り

卒業した神奈川県の公立高校が近く創立60周年を迎えるということで、学校創立の年(昭和31年=1956年)に先輩たちが創った野球部も創部60年ということになる。人間で言えば、還暦ということで節目の年だが、野球部OB会の命令で、これに合わせて野球部部史の編集・発行の仕事を引き受ける羽目になった。

高校や体育系クラブの学年の数え方は「14期」(筆者の場合を例に取った)といった具合に「期」で示すことが多いと思われるが、すでに野球部のOBたち(女性マネージャーを含む)も卒業したばかりの大学生を含め60期に近い大所帯になっているため、このすべての歴史と活動を記録するのは難しい。そこで筆者が担当したのは、年齢が一回り程度まで上の1期生から、5~6年下の後輩たちまでは部活動やOB会の親睦会などでよく知っているということで、1期生から20期生までだ。20期の後輩たちもすでに50代半ばで、勤務先の会社や学校では責任を負う立場だ。

ボランティアでこのような取材・編集の仕事をしていて興味深いのは、筆者よりもかなり年長の先輩たちはあまりパソコンなどで文章を書くことが習慣になっていないことだった。各期ごとに主将経験者らに頼んだ1200字程度の文章は徐々に集まりつつあるが、部草創期の先輩たちは記憶も薄れ、この種の文章は書き慣れていないということで、筆者が面談の約束を取り付け、聞き語りの取材に出向くことになる。

面倒と言えば、面倒な作業なのだが、何回か経験して面白かったのは、数時間をかけて聞き語りのメモを取ることによって、これまでは野球を通してしか知らなかった先輩たちの野球以外の「顔」が見えてくることだった。

60年近い高校野球部の歴史の中で「ナンバー1投手」と誰もが認めるNさんは小さな不動産管理会社の社長さん、野球部が最も甲子園に近づいたチームの主将だったSさんは葬儀屋さんの社長といった具合に、先輩たちの社会人としての歩みがおぼろげに浮かんでくるのである。

こうした先輩らの中で予想もしていなかった仕事をしていたのが1期生のIさんだった。横浜市にあるIさんの小さな店を訪ね、入学早々、野球部は創ったものの、グラウンドは雑草と石ころだらけで、最初の3カ月はグラウンド整備の毎日だったこと。1年生ばかりのチームだったので、翌年の初勝利まで18連敗し、この記録は今も破られていないことなどを穏やかなIさんの話から知った。

それよりも驚いたのが、70代半ばのIさんが奥さんとともに小さなカヌーショップを経営し、カヌー愛好者向けの合宿や練習のアレンジ、カヌーに必要な道具の貸し出しなどを行っていることだった。Iさんは高校卒業後、大学でも野球部を続けた名選手の一人であることは承知していたが、脱サラした後、30年近くもあまりなじみのないカヌーの普及に携わっていたことは知らなかった。奥さんともども、カヌーに誘われたが、小学生にもできるということで、近く挑戦してみたい。(T・I)

 
神奈川県立多摩高校野球部 部史 (創部60周年記念事業)より転載
 

 




 

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