OB・OG会

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高校野球の女子マネージャーの今昔

高校野球の女子マネージャーの今昔

やや旧聞で恐縮だが、2017年春の選抜高校野球大会では部員数の少ない東北地方の出場校の女子マネージャーが試合前の守備練習への補助要員としての参加を高校野球連盟から初めて許可され、甲子園球場のホームベース付近でノックする監督にボールを手渡ししている光景が大きく報道された。50年近く前の元高校球児の一人として、時代の変化に深い感慨を覚える。

というのは、筆者の母校である神奈川県の公立高校の野球部も長く、慢性的な部員不足に悩まされ、試合前の守備練習などでは「猫の手」ならぬ女子マネージャーの助けを借りたいと思ったことが幾度となくあったからだ。もちろん、当時所属していた硬式野球部には何人かの女子マネージャーがいたが、その仕事は試合経過を記録するスコアブックを付けたり、乱雑極まる部室の整理整頓、試合時の後方支援(レモンのスライスや飲み水の手配)などに限られ、危険なボールが飛び交うグラウンドに出てくることはなかった。正確に言えば、禁止されていたからである。

他の運動競技の事情はよく知らないが、硬いボールである硬球を使う高校野球の練習で女子マネージャーの出番がなかったのは、「やはり危険だ」という理由が大きかったのは間違いない。高校の野球部時代、監督や先輩からまず厳しく注意されたのは練習や試合の時にボールから絶対に目を離してはならないということだった。特に練習時のグラウンドでは、バッティング練習の鋭い打球や選手が投げる送球のボールがあちこちで飛び交うことも多く、頭部など当たり所が悪ければ、生命の危険もある。野球部の1年先輩で、投手だったFさんは守備練習中の送球が頭部を直撃したため、脳波に異常を来し、退部に追い込まれた。後ろ向きで他の選手が投げたボールに気がつかなかったための不幸なアクシデントだった。

高校野球の聖地・甲子園球場の全国大会での試合前練習に女子マネージャーの参加がようやく認められたのも、さまざまなスポーツ競技に女性が進出してきた大きな流れの中の一こまなのだろう。今では当たり前の女子マラソンや女子サッカーも30年ほど前までは日本では解禁されていなかったのであり、現在から見れば、女性の運動力を侮っていたとしか思えない。

すでに社会人の長女はどちらかと言えば運動は苦手のタイプだが、大学生のときに何を思ったか、弱小の陸上部のマネージャーを買って出て、100メートル走や中距離走、砲丸投げなどの男子部員の練習に付き合っていた。硬式野球とは違って、危険度は小さいが、弱小な部で部員も少ないとあって、練習の際に選手の記録を測ったり、走り方をビデオに撮ったりと、本人は後に、「いろいろと部員の役に立つことが多く、卒業時に大いに感謝された」と話していた。縁の下の力持ちのような存在の女子マネージャーだが、選手だけでなく、マネージャー自身も活動の中からさまざまなことを学ぶことができる。試合や競技にとって重要なチームワークづくりの潤滑油として、男女問わず、マネージャーの存在は貴重だ。(T・I)




 

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